海底原人ラゴン
私の知っていたラゴンはウルトラマン「大爆発五秒前」のラゴンだった。
巨大な緑色の水棲人はあまり美しくなく知的にも見えず、どう見てもバクダンが主役で、どちらかというとゲテモノ怪獣に見えた。ウルトラQのラゴンは思索的な姿をしている。もっともこれはカラーよりモノクロに「芸術性」を感じるある種の思いこみのせいかもしれない。
この年になってウルトラQを見て初めて、イデ隊員の不思議な科白「あんなに音楽が好きだったのに」の意味がわかったのだが、人間が音楽を好むようにラゴンも音楽が好きなのだというよりは、音楽に知的な興味を引かれているように見えた。人の声を雑音のように嫌うラゴンは、音楽のなかから異なる文明が自分に語りかけるのを感じたのだ。海に棲む妖精ラゴンは波間に歌うように言葉を交わすのかもしれない。
一軒家に現れたラゴンと海岸に現れたラゴンは別人だったのではないかと私は勝手に思っている。ラジオを片手に危険を冒して崖に誘導したラゴンが次のシーンで海岸に再上陸したのでは、万城目さんが無駄骨折ったみたいと思ったのがよけいなことを考えついたそもそものきっかけである。彼らは別人で、男女で、彼らの子供を捜しに来たのだ。
ラゴンの子供が成人のミニチュアなのには笑ってしまったが、なにもラゴンの子供が人間の子供と同じように幼児体型であるとはかぎらない。高貴なる彼らは、あの姿で生まれ、あの姿で子をなし、あの姿のまま老いて死んでゆくのであろう。
ウルトラマンにてすでに怪獣化してしまったラゴンではあるが、願わくば海洋開発だの水質汚染だのが彼らの世界を脅かすことのないように。海深く彼らの生活が静謐のうちにありつづけますように。高貴なる彼らが二度と再び汚辱の地上に足を踏み入れずともよいように。
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